雨が降っていた
あの五月の雨の日
僕たちは飽きもせずまだ行ったことのない外国の山の話をしてた


来月には山に行くよ休みが取れたら
カラ松の新緑がいちばんきれいな頃だよ
僕たちは雨に濡れたその色を思い描く


何があったかは聞かないでくれよ
一人になりたいけれど一人にされたくはないんだ


山が深く夜も深く
静かできっと独りでもっと独りで
僕はもっと独りになりたい
僕は孤独を知りたい
孤独を知って本当には独りじゃないんだと知りたいんだ


山が深く夜も深く
だけどいつか夜は明ける
そうしたら僕は歩き出すから


雨が降っていた
あの優しい雨の日
僕たちは誰からももう崇拝されなくなった神様の話をしてた


またいつか山に行くよ休みが取れたら
ひそひそと一歩ずつ踏みしめて歩くよ
僕たちは雨に濡れたその音をその音を


何があったとかそういうわけでもないけど
悲しくなるとふらりと山を歩きたくなるんだ


山が深く夜も深く
暗くてきっと独りでもっと独りで
僕は独りじゃ生きていけない
だけど孤独を知りたい
鏡のない世界で自分の輪郭をぼんやりとさせたいんだ


山が深く夜も深く
ようやく僕の夜が明ける
そうしたら僕は歩き出すから