男子、27歳、秋

キミが走り去るうしろ姿を眺めながら、僕はとても満足だった。
あの日の出来事、それがその後の僕の人生を、自意識を支えてきたんだ。
世界のすべてが僕を否定するようになって、半年。
彼女はこのモノクロの世界で、唯一、色付いた存在。
あのときの彼女の表情。あのときの彼女の鳴き声。あの美しきサーモンピンク。
僕は忘れない。この世に生きた、唯一の真実。唯一の意味。
でも、僕はあのとき、キミのうしろ姿を眺めながら、ひとつだけ後悔したんだ。
キミのかわいいプリーツスカートを汚してしまったことを。