男子、27歳、秋

キミが走り去るうしろ姿を眺めながら、僕はとても満足だった。
あの日の出来事、それがその後の僕の人生を、自意識を支えてきたんだ。
世界のすべてが僕を否定するようになって、半年。
彼女はこのモノクロの世界で、唯一、色付いた存在。
あのときの彼女の表情。あのときの彼女の鳴き声。あの美しきサーモンピンク。
僕は忘れない。この世に生きた、唯一の真実。唯一の意味。
でも、僕はあのとき、キミのうしろ姿を眺めながら、ひとつだけ後悔したんだ。
キミのかわいいプリーツスカートを汚してしまったことを。

世界交響曲


世界は今日も生まれては消え

君と僕らは途方に暮れる

彼らの言葉を抱えたままで



業火の下にロボットは空を裂き

兵器の少女は恋人の胸で泣く


選ばれた少年は自己の意義に苦悩し

人類の住処が地に撃ち堕される



彼らは詠う、世界の詩を

命を削り、言葉を駆使し

ただ終末へと疾走する



その歌の名は 「世界交響曲


君と僕らは立ち尽くす

言葉の残滓の山の前で

肥大し続ける残骸の前で


田舎の子供たちは運命に弄ばれ

”目”を持つ青年は吸血鬼と出会う


退屈な彼女は異世界を渇望し

少年たちは裏山でUFOを待つ


彼らは奏でる、世界の旋律を

冒険と不思議に満ちた音たちを

堕落と飽食に生きる僕らへと



その旋律の名は 「世界交響曲


君と僕らは聞き流す

世界の消えるその一瞬を

世界の壊れるその瞬間を


山間の村はロボットに焼き尽くされ

兵器の少女が少年と苦悩を掻き消す


退屈な彼女はナイフで切り裂かれ

少年たちは堕ちゆく住処を見る



悲鳴を発するワールズエンドの刹那に

彼らが奏でる終末の曲の群れに

君と僕らは名前をつけた


その曲の名は「世界交響曲

きっと大丈夫

うん、ほんとだってば、
ぜったいだよ、やくそくするよ
きみと、ぼくとのやくそくだよ
めとめをあわせて、
こゆびとこゆびをからめて、
ゆびきりさ、やくそくさ
ぜったいに、なにもしない
ぜったいに、さわったりしない
だから、ほら、さ、ゆっくりと
はなさきにちかづけて
おっぱいのさきっちょを、さ

あなたの優しいおおきな手
そのごつごつとしたおおきな手で頭をなでられるたびに
わたしは泣きそうなくらいとても幸せでした
あなたはもう
この世にはいないけれども
あなたの手のぬくもりとあなたの不器用な優しさは
わたしのこころにいまもいます

ふたり暮らし(id:foreplay)

きみの作ったおみそ汁があんまりにも僕の母親の味と似てたもんだから
お椀の中から赤い糸がびゅっと出てきて
僕ときみの小指にぐるぐると絡まって
でもきみは全然気づいてなくって
「少し濃いかなあ?」
僕をちらちらと見てる
心配そうな顔で
まるで通知表を見せてる子供みたいに
それがひどくおかしくってさ
あの時笑ったのはつまりはそういうことで
おいしくなかったとかじゃないんだよ
ねえそろそろ機嫌直してよ
ご褒美に指輪をプレゼントするから
きみの作ったおみそ汁を毎日飲みたいから

小学生の頃の夏の思い出

僕のベッドの下にバッタが居るよ
僕のベッドの下にバッタが居るよ
まるで昔からそこに住んでいたかのように
僕のベッドの下にバッタが居るよ


ベッドの下に茶色いバッタが居るよ
ベッドの下に茶色いバッタが居るよ
日本有数の都会化された住宅なのに
ベッドの下に茶色いバッタが居るよ


どこから入ってきたのかな?
バッタに聞いてもわからない
バッタは僕の視線なんか目もくれずに
赤点取った僕のテスト用紙を噛んでた


僕のベッドの下にバッタが居るよ
僕のベッドの下にバッタが居るよ
まるで昔からそこに住んでいたかのように
僕のベッドの下にバッタが居るよ


僕の猫が部屋に現れたよ
僕の猫が部屋に現れたよ
動く物を見ると思わず何でも飲み込んでしまう
僕の猫が部屋に現れたよ


どこから入ってきたのかな?
猫に聞いてもわからない
猫は僕の視線なんか目もくれずに
赤点取った僕のテスト用紙を噛んでたバッタを噛んでた


僕のベッドの下にバッタが居たよ
僕のベッドの下にバッタが居たよ
まるで昔からそこに住んでいたかのように
僕のベッドの下にバッタが居たよ


バッタは後ろ足だけ残して消えたよ
バッタは後ろ足だけ残して消えたよ
残りは全て猫のお腹の中
バッタは後ろ足だけ残して消えたよ


真夏の怪奇である

夏祭り

僕が勉強に集中できないのはどうしてだろう
暑さのせい?
TVのせい?
いいや違うね、僕の集中を紛らわせてるのは、アレだ
ほら見えるだろ、向かいの公園でやってるお祭り



あの中の

チョコバナナが
フランクフルトが
いけないんだ



あの中で 何人もの浴衣の女子が

チョコバナナを
フランクフルトを
おじさんから受け取ったそれを
くわえるんだ



嗚呼何て卑猥な妄想
チョコバナナに
フランクフルトに
「おじさんの」を付けるだけでもう 卑猥のバーゲンセールだ



「じゃんけんに買ったら『おじさんの』フランクフルトをもう一本」だなんて!



ほらやっぱり、id:amuhimaは勉強に集中できてない。